まず、税務調査を受ける上で絶対にやってはいけないことがあります。
それは、「調査官に仕事をする気にさせる」ことです。具体的には「すぐにバレるようなウソを突き通したり」「コンプレックスを刺激するような言動をする」ことで過度に正義感に火をつけることといってもいいでしょう。
もちろん、調査官は真面目に仕事をしに来ています。ただ、それはあくまでも公務員としての仕事の一環としてのものです。「適正な申告の指導」という大義名分のもと持てる権力を最大限行使したくなるような個人的な感情の刺激は避けたほうが良いでしょう。
映画「マルサの女」やNHKのドラマ「チェイス」などのイメージがあるのか税務調査と聞くと「ご飯がのどを通らない」というくらい憂鬱になる方も多いようです。しかし、悪質で多額の脱税をした際に行われる強制調査でない限り、それほど緊張をなさる必要はないと思います。公務員の仕事のひとつに過ぎないのです。
(1)税務調査の日程調整
強制調査ではない任意調査の場合、必ず税理士ないし会社側に「税務調査に伺いたい」旨の電話連絡が税務署の担当官から来ます※。この場合も、必ずしも税務署の指定した日時に合わせる必要はありません。こちらの都合と担当調査官、税理士三者の都合の合う日を協議します。
例えば、2日間会社に訪問しての実地調査を要求された場合でも、最初の1日だけを決めて、後は調査の進展状況で別途決めることも可能です。
また、指定された税務調査の時期が繁忙期などで税務調査の対応をしている時間的余裕が無い場合、1-2ヶ月程度であれば時期を遅らせてもらうことも可能です。
私自身も12月-2月は調査の立ち会いをする余裕がないため、その期間で税務調査の申し出があった場合には3月以降にしてもらうようにしています。
実際の調査の日数はケースバイケースですが、まずは管轄が国税局が担当するか、税務署が担当するかで大きく変わります。
国税局が担当する場合には、概ね1ヶ月程度(毎日ではありませんが)会社で実地の調査が行われます。
税務署が担当する場合は、実地の調査は2日間という例が多く、中には当初は2日間の予定であったものが、1日で終わる場合や追加でもう数日延長される場合もあります。
(2)税務調査当日
実際の税務調査の流れとしては、まず初日の午前中に、社長に対して会社の概況などについての質問が行われます。
実際に帳簿等の確認が行われるのはその日の午後以降であることが一般的です。
その後は、特に社長が税務調査の現場に臨席している必要はありません。むしろいないほうが良いと言ったほうがよいでしょう。
下記の「一般的にご用意頂く資料」を税務調査官がいつでも閲覧できるように配置しておけば、後は経理担当者が必要に応じて質問に答えたり、追加資料を提示するだけで構いません。
なお、税務調査への対応で申し上げたいことがあります。それは、税務調査は「面接試験ではない」ということです。
別にその場で解答をしなくても構いません。「わからないので調べておきます。」「あとで、資料を送付します」といった対応で良いのです。
また、立ち会いをした税理士が調査官と激しくやりあうというのも余り意味のない行為です。
というのも、現場に調査に来る調査官は多くの場合、最終的な決裁権を持っていません。
ですから、その場で大きな声を自分の主張を伝えたとしても、調査官としては「ご意見は伺っておきます」という対応しかしようがありません。
むしろ、顧問税理士が頑張っていることを顧問先にアピールするためのパフォーマンス程度に思っておけばよいでしょう。
私自身も税務調査に立会をしてもその場ではやるべきことがほとんどないというのが現実です。
そのため、無駄に税務調査立会い報酬がかさんでも申し訳がないので、「どうしても不安なので全日程立ちあって欲しい」というご要望がない限り、現地での立会は初日しかしていません。
それでも、そのことが原因で税務調査で不利な結果になったことは一度もないのです。
(3)決裁権者との税務調査まとめ
現地での調査が終われば、税務調査が完了というわけではありません。むしろ、それは材料収集の第一歩です。
調査官はそこで集めた資料を持ち帰り事前に収集していた他の資料と付け合わせをしながら分析をしたり、取引の相手先に調査に行き、取引内容が説明のとおりであったのかなどの確認をします。
概ね、現地での調査から1ヶ月程度で調査の立ち会いをした税理士に担当者から連絡が来ます。
ここからが税務調査の本番と言ってもよいでしょう。ここで最終的な税務調査のまとめが行われます。
通常は、まず調査官から今回の税務調査での指摘事項の一覧が提示されます。
それに対し、税理士が、法律論としての「解釈レベル」と今回の取引についての「事実認定レベル」で反論をしていくことになります。
その結果、その指摘されたことに対し会社側が納得をした場合には自らが「修正申告」に応じることになります。
一方でどうしても税務署との見解の相違が埋まらない場合には、税務署が自らが正しいと考える所得金額に「更正」をし、強制的に追徴課税がされます。
当然、それには会社側は納得がしないので、異議申し立て、審査請求、裁判などを通じてその主張をしていくことになるわけです。
しかし、現実的には、お互いの主張は徹底的にぶつけ合うものの、そこまでの係争になる前に、折衷案で最終的な「落とし所」を探る事になります。
例えば、税務署から10の指摘された事項があれば、全体の修正金額やその追徴税額が「後で取り戻せるものであるのか」「後で取り戻すことができないものであるのか」などを判断しながら、どの指摘事項だけを認めるかを税理士が税務署の決裁権者と言葉は丁寧ながらも激しいネゴシエーションをします。
それこそ当初は税法論議であったはずが、最後には「このくらいは納税して頂かないと上司の許可がおりない」「いやいや、そんなに追徴されたら顧問契約を解除されてしまうのでこのあたりで」といった価格交渉にも似たものになっていきます。
その結果生まれた「落とし所」の内容に会社側が納得した場合、修正申告に応じることになるというのが一般的な税務調査のまとめ方なのです。
※飲食店や小売店などの現金での販売が主体の会社に対しては、無予告で直接税務調査に来ることもあります。
目的は現金の実際の残高と帳簿の残高が合致することの確認です。その場合にも、まずは税理士にご一報下さい。税理士が到着するまで無理に調査を受け入れる必要はありません。
法的には、帳簿等は9年間の保存義務があります。実際に任意調査の対象となるのはほとんどが直前期から3期間です。
ですから最低限その期間の必要資料はいつでも見ることが出来るように揃えておき、それ以前の資料については必要となった際に適宜参照すればよいでしょう。
これらの資料をいつでも調査官が閲覧できるように事前に用意しておけば、税務調査はスムーズに行われやすいでしょう。
税務調査で修正を求められたことも、その内容により、意味は大きく変わります。
税法の解釈上の見解の相違や売上高の計上時期が当期なのか翌期なのといった指摘であれば、電話でまとめをしてしまうことのほうが多いと言えます。
しかし、重加算税の対象となる「架空人件費」「売上除外」といったものが指摘された場合には、大抵社長と税理士が税務署に呼び出され厳しく叱責がされます。
当然課されるペナルティも大きく、さらに脱税の内容と金額によっては刑事罰が課されることもあるのでそのようなことは絶対にしてはいけません。
なお、税務調査でチェックされることが多いのは下記のような項目です。
税理士に対する不満として良く耳にするのが「税務調査の時にこちらのために戦ってくれなかった。まるで税務署の味方のようですらあった」というものがあります。
もちろん税理士にとって税務署の味方をするメリットなどなく、そのような税理士がいることは私自身は信じがたいものです。
しかし、そのような気持ちをお客様に持たれるというのはお客様と税理士の間で税務調査についてのコミュニケーションがうまくとれていないことだけは間違いないことでしょう。
当事務所では、税務調査で最も大切な事は税理士の自説を押し通すことではなく、まずは「お客様の不安と不満を解消する」事だと考えます。
ですから当事務所では、税務調査で指摘された事項について「譲ってもよいものと絶対に譲ることができないもの」についてお客様からお聞きするとともに「交渉の余地のあるものと交渉の余地のないもの」などを丁寧に説明いたします。
その上でお客様の要望を可能な限り実現できるような折衝をしながら最適な税務調査の結末を導き出すように努力をしています。
※税務調査立ち会い並びに修正申告報酬は顧問料とは別に請求をさせて頂きます。詳しくは「よくあるご質問(FAQ)」をご確認ください。
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